
Gent, Belgium 1979 ©Toshio Shibata
Early Works ‒ 1987,1988
and Belgian day
柴田 敏雄
2025年5月9日(金) ー 6月14日(土)
金曜日 15:00 - 20:00
土曜日 11:00 - 18:00
火・水・木曜日はアポイントメントのみ
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日・月曜日 祝日休廊
※ 5月18日(日)、22日(木)、25日(日)、29日(木)、6月1日(土)は11:00-18:00で営業
この展覧会 は 国⽴写真間 に参加しています。国⽴市内 に点在する 5 つのギャラリーが 、 それぞれの作家による 多様な 視点 を紹介し 、 写真の現在地を探る 新しい イベントです 。
ZEIT-FOTO kunitachi access
関連イベント
中近東の作をまとめた新刊写真集「 1987」( Deadbeat Club 刊 / 2025年5⽉下旬 )の刊⾏を記念してサイン会とクロージングパーティーを開催します。
● サイン会 & クロージングパーティー
6 ⽉ 14 ⽇ 15:00〜 (予約不要)
この度、ZEIT-FOTO kunitachi では柴⽥敏雄「 Early Works ‒ 1987, 1988 and Belgian days」展を開催いたします。その活動の中から初期の10年間に創作された作品約50点を、下記の3つのテーマで構成した展覧会です。
・ベルギー留学時代の作品( 1970 年代後半)
展⽰作品の中で最初期となるのは、柴⽥のベルギー留学時代の作品です。1975 年にゲント王⽴アカデミーに留学した柴⽥は、校⻑の勧めで新設されたばかりの写真学科に⼊学し、本格的に写真を始めることになりました。それまでのアトリエでの絵画制作と異なり、屋外での撮影に新鮮さを覚えた柴⽥は、これ以降、外の世界に⽬を向けるようになります。初期作品から⼤型カメラを⽤いたこともありますが、すでに現在の柴⽥の作⾵を感じることができる作家の原点ともなる貴重な作品群です。

Gent, Belgium 1979 ©Toshio Shibata

To Cappadocia 1987 ©Toshio Shibata
・中近東で撮影した作品( 1987 年)
79年にベルギーから帰国。当時、⽇本橋室町にあったZEIT-FOTO SALONの創業オーナー⽯原悦郎と出会い、82年には個展「 Comme le Diorama ディオラマのように」を⽪切りに、 90年代前半にかけて、 2年に⼀度のペースで ZEIT-FOTO SALONで新作を発表し続けました。第17回⽊村伊兵衛写真賞( 1991年度)を受賞した「⽇本典型」の作品群に⾒られる、ダムや道路脇の法⾯など⾃然の中の⼈⼯物など、柴⽥作品を代表するイメージも、ZEITでの展覧会を振り返ると80 年代ばごろから⾒出すことができます。
それと同時期に撮影されたこれらの作品は、 意外な作品として⾒る⼈を驚かせるかもしれません。なぜなら、それは現地で出会った⼈々を撮影したスナップ 写真 だからです。柴⽥はこれをな んと4×5 の⼤判カメラであるリンホフを主に⼿持ちし、撮影したといいます。 今回の展⽰が初公開となります。
89年に⽯原悦郎は外部企画として『オリエンタリズムの絵画と写真』展を開催します。これは⽯原が所有していたオリエンタリズム絵画と、現代写真家がこれから創る新しい作品とを並べるという内容でした。そこで、⽯原はギャラリーに出⼊りしていた若⼿写真家数名に声をかけ、中近東イスラム圏に共に出て作品制作を決⾏します。柴⽥は合わせて4度、この撮影旅⾏に参加します。今回展⽰されるのは、2度⽬のトルコ(「ToCappadocia,ʼ87」)と3度⽬のエジプトで撮影した写真(「AswanWesternAgriculturalRoad,1987」)が中⼼です。

静物 1988 ©Toshio Shibata
・造花などを撮影した静物作品(1988年)
ちょうど中近東への撮影旅⾏から戻った頃、柴⽥はより精緻で密度の⾼さを求め、カメラをこれまでの4×5から8×10へと持ち替え、このカメラで成し得る表現の追求を⾏なったといいます。その過程で⾏った静物の撮影は柴⽥にとって実験的な試みでした。被写体は⼩さな布製の造花や野菜などで、これも極めて珍しいことです。
⽯原悦郎が柴⽥敏雄について話すとき、その⼈柄はいつでも親しみやすく、⾃由な⼈という印象を私たちに与えたものでした。実際の柴⽥に会えば、おそらく多くの⼈がそれに共感すると思います。⼀⽅で、⽯原はその作品は本質的に「⾮決定的な瞬間であり、鑑賞者の共感も拒絶する」と述べ、純粋芸術として評価しました。「共感も拒絶する」という⾔葉には、私たちが柴⽥作品を前に、惹きつけて⽌まないにも関わらずただ焦がれるばかりに⽴ち尽くしてしまう、あの瞬間の本質を突いています。
果たして、初期作品に私たちはどう振る舞うことになるでしょう。3つテーマを通じて、柴⽥敏雄作品をより深く知りたくなる、そんな展覧会です。撮影当時に制作したヴィンテージプリント、ネガをスキャンし、デジタルで再現したインクジェットプリントも取り混ぜて展⽰します。ぜひ、お運びください。
柴⽥ 敏雄(しばた・としお)
1949年、東京都⽣まれ。東京藝術⼤学⼤学院美術研究科絵画専攻で版画や絵画制作を⾏う。修了後、ベルギー⽂部省から奨学⾦を受け、ゲント市王⽴アカデミーに⼊学し、新設された写真学科へ進学。ここで本格的に写真を始め、⼤判カメラによるモノクロ写真の制作に取り組み始める。79年に帰国後、ツァイト・フォト・サロンで継続的に個展を開催。細部まで緻密に描写され、緊張感がありながらも優美さを備えた唯⼀無⼆の⾵景写真として注⽬を集める。代表的なシリーズである「⽇本典型」は、柴⽥⾃⾝が「⽇本の国⼟の4分の3以上が⼭岳地帯であるため、⽣産的な⼟地利⽤には常に⾃然との闘いが伴う」と述べる通り、⼭を切り拓き河川を治⽔する⾃然と⼈とのせめぎ合いの場⾯を捉えたものだが、作品に表れるその「闘い」の痕は造形的に美しく、畏怖さえ漂わせている。その美しさは魅⼒的でありながらも、⼈が制御しきれないものの⼒を感じさせる。92年に⽊村伊兵衛写真賞を受賞。2000年代からはカラー写真も発表し始める。⽇本の現代写真を代表する写真家の⼀⼈として国際的にも活躍し、国内外で多数の展覧会を開催。その作品は世界中の美術館に収蔵されている。