“私は2次元で、金属や木材の彫刻なんかと比べて小さくて、いつでも見ていられて、コンピューターなんかに入ってなくて、目の前にある、絵や写真は貴重な精神的糧だと思うのです”
杉浦邦恵
この度、2022年10月21日より杉浦邦恵展「絵と写真は塩と胡椒みたいだね」を開催いたします。杉浦による大小さまざまな絵と写真による作品を展示いたします。
長い間、ニューヨークで暮らす杉浦にとって、ツァイト・フォトは日本でのホームのひとつでした。オーナーの石原悦郎がいなくなったいまでも、こうしてツァイトで展示ができることは素朴に嬉しいことです。ここでは気兼ねなくくつろいでもらいたい、と思いながら提案されたこのタイトルは、杉浦邦恵らしさの詰まったものでした。
日々の食卓にならぶ塩と胡椒の例えは、チャーミングで親しみを覚える杉浦邦恵という人、そのものを連想させます。一方で杉浦邦恵の作品は、あえていうなら抽象で、例えば草花のような存在もシルエットとして表現されます。杉浦に見えているかたちで世界を見ると、それは驚くべき姿として再出現するのです。つまり、彼女に感じる比類ない優しさと、作品が私たちに突きつける新しいビジュアルとの間には隔たりがあり、そこには緊張感が生まれます。ですが、それは心地のよい緊張感です。だからこそ、もっと杉浦邦恵を知りたいという気持ちが何度も掻き立てられてきたのだと思います。
絵や写真は「精神的糧」であると、杉浦は言います。もしも生きることに厳しさや困難さを感じていなければ、人は精神的な糧を求めることはしないのかもしれません。それを例えていうなら、塩と胡椒というありふれたものとして語ってしまう杉浦の作品には、耐え難い孤独や息苦しさを抱えている時も、モノを食べながら生きていく人間の、どうしようもなさをまるごと受け止めるような器の大きさがあります。それが彼女の作品を心地よく感じる理由なのかもしれません。
旧石原邸をリノベーションしたツァイト・フォト・国立での展示空間で、ぜひ、杉浦邦恵のある日常を想像してみてください。「精神的糧」との出会いが見つかることを願っています。
Bud (Yellow, Green and Blue) 2004 ©Kunié Sugiura
Yayoi Kusama Ap4 2003 ©Kunié Sugiura
<同時期開催>
[京都]2022.10.6-10.25 「杉浦邦恵」PURPLE(京都市中京区式阿弥町122-1 式阿弥町ビル3階)
[東京]2022.10.26-11.7 「Woman Labor」日本橋三越本店6階コンテンポラリーギャラリー(東京都中央区日本橋室町1-4-1)
[京都]2022.11.8-11.20 「杉浦邦恵 100Cuts: Eternal Moments "遺された一瞬”」MEDIA SHOP gallery(京都市中京区河原町通三条下る大黒町44 VOXビル2階)
杉浦 邦恵 Kunié Sugiura
1942 名古屋市生まれ
1967 School of The Art Institute of Chicago 卒業、BFA 現在ニューヨークを拠点に活動
主な個展
2018-「杉浦邦恵 うつくしい実験/ニューヨークとの 50 年」東京都写真美術館 (東京)
2014-「You are always on my mind / you are always in my heart; 写真-絵画とフォトコラージュ1976-1981」Taka Ishii Gallery (東京)
2012-「Photographic Works from the 1970s and Now」Leslie Tonkonow Artworks + Projects (ニ ューヨーク) ※個展; 2015, 2007, 2003, 2002.
2008-「Time Emit」Visual Arts Center of New Jersey, Summit (ニュージャージー) (curated by Charles Steinback)
2004- Zeit-Foto Salon (東京) ※個展; 2002, 1998, 1995, 1993, 1989, 1979.
2000-「Dark Matters / light affairs 」Sandra and David Bakalar Gallery, Massachusetts College of Ar t(ボストン)
1999- Galleria Civica (モデナ)
1998- 「惹きつけるもの」 愛知県立美術館 (名古屋)
1978- 銀座絵画館(東京)
1972- Warren Benedek Gallery (ニューヨーク)
1969- 「Cko」Portogallo Gallery (ニューヨーク)
主なグループ展
2015- 「For a New World To Come: Experiments in Art and Photography, Japan, 1968 – 1979」Museum of Fine Arts, Houston(ヒューストン); Grey Art gallery(ニューヨー ク)
2009- 「Infinite Patience: James Drake, Kunié Sugiura, Stanley Whitney」Haunch of Venison (ニューヨーク)
2007- 「Out of the Ordinary/Extraordinary: Japanese Contemporary Photography」University of Michigan Museum of Art (アナーバー)
2005- 「85/05」仙台メディアテーク (仙台)
2001-「This is Not a Photograph」University Art Gallery, University of California(サンディエゴ)
1997- 「New Photography 13」The Museum of Modern Art(ニューヨーク)
1994- 「『うつすこと』と『みること』─意識拡大装置─」埼玉県立近代美術館(埼玉)
「Negative Energy, Real Art Ways」(ハートフォード、コネチカット)
「KARADA が ART になる時[物質になった器官と身体]」板橋区立美術館(東京)
Experimental Vision, Denver Art Museum
1979- O.K. Harris Gallery(ニューヨーク)
1972- 「Annual Exhibition of Painting」Whitney Museum of American Art(ニューヨーク)
1969- 「Vision and Expression」George Eastman House(ロチェスター、ニューヨーク)
コミッションワーク
2003 The Scientist Papers, JGS Foundation, New York, 2003
パブリックコレクション
愛知県美術館、Austin Museum of Art(オースティン)、Dallas Museum of Art(ダラス)、Denver Art Museum(デンバー)、The Fogg Museum of Art, Harvard University, Cambridge(マサチューセッツ)、The Frances Lehman Loeb Art Center, Vassar College(ポキプシー、ニューヨーク) 、広島市現代美術館、北九州市立美術館、Norton Museum of Art(ウェスト・パルムビーチ)、The Museum of Fine Arts(ボストン)、The Museum of Fine Arts(ヒューストン)、The Museum of Modern Art(ニューヨーク)、埼玉近代美術館、東京国立近代美術館、東京都写真美術館
The Rose Art Museum, Brandeis University(ウォルサム、マサチューセッツ) 、Santa Barbara Museum of Art(サンタバーバラ)、栃木県立美術館、The Weatherspoon Art Museum(グリーンズボロ)、Whitney Museum of American Art(ニューヨーク)、Yale University Art Gallery(ニューヘイブン、コネチカット)
新型コロナウィルス感染予防のための対策とご来場に際してのお願い
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また、スタッフは毎日検温等で健康状態を確認し、マスクを着用して応対をいたします。
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